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映画、特撮、日々のこと

【ネタバレ有】HiGH&LOW THE WORST感想/スピンオフ作品でクロスオーバーとアップデートを同時進行し次世代へのバトンタッチを遂げた問題作

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こんにちは、おソース(@ssssfx_)です。

凄まじいものを観ました......。

映画『HiGH&LOW THE WORST』
youtu.be

 一度は終了した、自分が大好きな作品が復活すると聞いたときは、もちろん嬉しかったし期待もしていたけれど……。まさかここまで文句のつけどころのないものをお出しされるとは思っていませんでした!

 シナリオ・アクション・美術・役者の演技。すべてがただただ最高、作品に関わってくださったすべての人に感謝。そんな体験をしてしまいました。

 個人的には、シリーズものの新作を
「過去作を知らない人でも楽しめるから観て!」
という勧め方をするのは、あまり好きではないのですが......
 今作に関して言えば、知識が全くない方でも楽しめるはずなので、ぜひ観ていただきたいと思います。

 というのも、HiGH&LOWという作品は劇中にざっくり数えて10個前後のグループが登場するのですが(自分で驚いたのですが10個もあるんですね!?)
 今作においてはその中のたったひとつ、鬼邪高校というグループのみにスポットを当てているスピンオフ作品であるためです。
 また、今回は高橋ヒロシ先生による漫画『WORST』とのクロスオーバー作品です。
 私はクローズもWORSTも全く知らない状態で観ましたが、その点に関しては、片方の作品を知らないとき特有の
「原作ネタっぽいけどこれはなんなんだろう」という置いてきぼり感であったり
「よくわかんないけど多分こういうことなんだろうな」という脳内補完が必要になる場面が
なかったので、そういった点でも問題なく、新規の方にも楽しめる作品であると思います。

ということで、以下より一部ネタバレ込みで紹介していきます。

『HiGH&LOW THE WORST』とは

あらすじ(公式サイトより一部抜粋)

“漆黒の凶悪高校”鬼邪高校。そこは定時制と全日制に分かれ、定時制の番長・村山良樹(山田裕貴)が鬼邪高校の頭を張っていた。鬼邪高の全日制に転入した花岡楓士雄(川村壱馬)は、いつか村山にタイマンを挑むべく、全日制の天下をとる野望を持っていた。

一方、やや離れた街・戸亜留市では、幹部以外全員スキンヘッドの最強軍団、鳳仙学園が勢力を強めており、鳳仙四天王が、過去最強の布陣を揃えていた。
そんな中、鳳仙の生徒が鬼邪高を名乗る者たちに突然襲撃され、時を同じく鬼邪高の生徒も鳳仙を名乗る者たちに襲われる事件が発生。仲間が襲撃されたことをきっかけに両校互いに敵対心を募らせてゆく。

個性派揃いだが圧倒的力を持つ鬼邪高校、一枚岩に組織化された鳳仙学園——。
夕暮れの河原で両校がぶつかり合う、世紀の頂上決戦が幕を開ける!

high-low.jp

シリーズそのものの世代交代を成し遂げた鬼邪高校

絶望団地からやって来た鬼邪高の新たなる伝説、花岡楓士雄

 なんと言ってもまず、今作の主人公・楓士雄が魅力的すぎる!
 HiGH&LOWシリーズは、これまでに多くの個性的かつ魅力的なキャラクターを輩出してきたバケモノのような作品ですが、楓士雄もまた彼らに決して埋もれない魅力をもっており、なおかつ彼らにはあまり見られなかった才能の持ち主です。
 それゆえ、今作は見ていて新しい風が気持ち良く吹いているような気持ちになれます。

 楓士雄は鬼邪高校に復学した初日から、かつて同じ団地の仲間であった司・ジャム男と再会し、早くもチームを結成。その後、今や鬼邪高校は全日制の中でも分裂し、各勢力がせめぎ合っていることがわかります。
 その様子は、さながらかつてのSWORD地区。ワクワクすると同時に、一筋縄ではいかなさそうな不安がよぎりますが、楓士雄は中学時代までの間に地元で培ってきた信頼関係やその知名度をもとに、次々と周りの生徒たちを巻き込んでいきます。
 そういった振る舞いから感じられる、「軽いノリではあるけれど根本的には軽く考えているわけではない様子」や「短時間で周りを巻き込んで取りまとめていくカリスマ性」などがとても魅力的で爽快感があり、今までのHiGH&LOWとはまた違う角度のアプローチだと感じました。

村山たちは子どもから大人へ。次の世代へのバトンタッチ

 シリーズ一作目から今作まで鬼邪高の看板を背負ってきた村山・古屋・関の三人はラストで卒業し、轟・楓士雄ら次の世代へと鬼邪高を任せて学校を去ります。
 しかし、今作は鬼邪高校の範囲のみならず、作品全体の世代交代が起きていると感じさせるシーンがいくつも見られました。

 小さな頃から共に過ごしてきた思い出があり、自分たちの育った場所を自分たちなりに愛している希望ヶ丘団地メンバーの姿は、同じく「俺たちの街」を愛していたコブラ達山王連合会に重なります。
 大切なものを守るために反社会の組織に潜り込み、一人で全てを抱え込む新太に、そんな場所から彼を助け出してまたみんなで笑い合いたいと願う楓士雄。彼らの関係性は、九龍と手を組んだ琥珀さん、もしくは一度は九龍の構成員にまでなったノボルを説得し連れ戻す山王連合会をやはり連想させます。

 傷つきながらも大切なものを守るために前へ前へと進んできた前作までの彼ら。今作では劇中で彼らが成し遂げたこと、また思うような結果にいかなかったことの両方を新規メンバーが改めて当事者として立ち向かい、より前向きな解決をできたと感じられる場面が多くあり、今回は作品世界とメタ的な意味の両方で
「過去と同じ展開をなぞったうえでアップデートし、より前へ進むこと」
に成功したのではないかと感じました。

鳳仙学園が魅力的すぎる

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志尊淳が全身全霊で演じきった鳳仙の頭

 鬼邪高サイドの新主人公・楓士雄に対し、鳳仙からはこちらも大変魅力的なキャラクターである上田佐智雄が登場します。

 演じる志尊淳のお芝居が本当に良くて、立ち姿ひとつとっても佐智雄の抱えているもの、それらに対する彼の決して単純ではない感情がにじみ出てきているように感じました。
 まだ高校生でたった10数年の人生であるにも関わらず、この子は沢山のものを背負ってきて生きているんだなぁ、ということを想像させられる演技で、キャラクター設定や脚本と志尊淳という役者が非情に良くマッチしたのだと思います。


 自分にとって志尊淳といえば、一番好きな戦隊である『烈車戦隊トッキュウジャー』の主人公・ライト。他には、『帝一の國』の光明はかわいらしく、かつ聡明なキャラクターを見事に演じきっていました。
 ライトも光明も、爽やかで明るく笑顔が多い、という印象でいえば共通する部分はあり、志尊淳本人に関してはどちらかというと「かわいい」系の顔かな、と思っていたのですが
今回は完全にそれらのイメージとは違った、新しい方向性を見せてくれました。

 私は普段、好きなシリーズの新作映画を観に行くときは大体あえて事前に情報を入れないというこだわりがあって(徹底しているわけではなく、なんとなくではあるんですが)
今回も、志尊淳がメインで出ることは知らなかったんですよね。思い返してみると、参加する、ぐらいの話は解禁時に聞いていたかもしれないですけど、観に行ったときには完全に忘れていました。
 そんな具合だったので、冒頭のTop DownをBGMに鳳仙が鬼邪高に殴り込みに行くシーンにしても、怪しいバーで無双してワルどもをボコボコにし妹を救出するシーンにしても、信じられないことに自分は画面に映っているのが志尊淳だと気付かなかったんですよね......。「めっちゃ顔の良い役者さんだけど誰? LDHの人?」という具合で。
 後半の、柔道場での鳳仙の会合シーンでやっと「もしかして......志尊淳!????!?」と気付けた感じで……。
 それほどに、志尊淳は役者として上田佐智雄というキャラクターを徹底的に演じきっていたということだと思います。

多くのオタクを虜にした男、小田島有剣

 今作のキャラクターは本当に全員魅力的で、かつ今作の新キャラだと思えないほどに作品世界に馴染んでいるのですが......
 佐智雄率いる鳳仙四天王のひとり、小田島有剣が本当にやばすぎる。

 まず、ビジュアルが結い上げた金髪にメガネ、しかも色が入ったレンズで、オーバーサイズのネルシャツをゆるっと着こなしてタンクトップが見えているんですよね。
 キャラクターはそのビジュアルまんまの性格で、とんでもない魅力をゴリゴリに詰め込んでいる......。
 基本的に気怠げな雰囲気で、四天王のひとりとして知的に振る舞う場面もあれば、飄々としたノリでマンガみたいな台詞を言うこともあり。さらに、鬼邪高との大乱闘では轟に対し「お前だけは他の奴と違うみたいだな」とワクワクした様子で挑むし、実際二人ともめちゃくちゃ強い。
 個人的には、マンガみたいなビジュアルにマンガみたいな設定の轟がTVシリーズ初登場時からどストライクで、以来ずっと轟が好きで。そんな轟に、同じくマンガみたいないでたちで、戦闘力の高いメガネキャラという共通点もある小田島をぶつけたのが天才の所業なんですよね。

 自分がそうだからなんですが、轟を好きな人は間違いなく小田島も好きになるのでは? と思ったし、その両者を戦わせるという、まさにそれが見たかった! というようなシーンをこちらが「見たいなぁ」と思うよりも早く提供してくれるHiGH&LOW、本当に素晴らしいコンテンツです。

チームとしての劇中完成度の高さ

 今作で初登場した鳳仙学園ですが、以前から本編に登場していたのでは? と錯覚するほどキャラクターやその関係性など全てが完成されていて説得力があり、他作品からのゲストでありながらHiGH&LOWの世界観に馴染んでいました。
 実際、自分は小田島やサバカンあたりは特にビジュアルがマンガすぎて、原作に出てくるキャラなんだろうなぁと勝手に思っていました。まさかの全員新キャラ……

 個人的にグッときたのは、幹部メンバーがサバカンを抱き締めて「お前だけにこんな危険な仕事、させねえよ……!」と言うシーン。この短いやり取りだけでも彼らの信頼関係を想像させられ、強い団結力で動いている集団であることが伝わって来ました。

新世代の主人公チーム・希望ヶ丘団地

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「曲がったキュウリ」で育んだ絆

 絶望団地、もとい希望ヶ丘団地で育った6人の幼なじみたち。彼らの中でも、誠司は勉学の道へ進み、他の男子メンバーらに比べ喧嘩もあまり積極的には行わないキャラクターとして描かれていました。
 誠司の通う進学校の生徒にとっては、日々喧嘩に明け暮れている鬼邪高校の生徒はもはや同じ生き物とすら感じられない。それはある意味では自然なことなのかもしれないですが、彼らなりに守りたいものがあって、大切な人のために命懸けで戦っている人もいる、ということを知っている誠司にとっては、印象だけで鬼邪高生の悪口を好き勝手言う同級生のことはとても黙って聞き流せるようなものではありませんでした。


 そんな誠司が同級生にキレるシーンは正直「やっちまったか……」とは思ったのですが、その後の先生との面談のシーンは「やっちまった」という感想を撤回したくなるほどの素晴らしさでした。
 単なる個人的な印象かもしれませんが、こういう“優等生が世間の鼻つまみ者の味方をするシーン”というのは、もう散々色々な創作物で聞いたことがあるような“いい話”を聞かされる、なんとなく茶番っぽいシーンになってしまうという印象がありました。
 今思うと、今までずっと最高の作品を提供してくれていたHiGH&LOWが急にそんなことをするはずがないし、完全に自分が無礼をはたらいて間違っていただけなのですが……。

 かつて6人で一緒に食べた、優しいサダ婆がいつも出してくれていた曲がったキュウリを例え話に人間の多様性を先生に口説く誠司。まだ上記の偏見があった自分は、
(「お行儀の良さだけで人を判断する、こんなつまらないところ辞めてやる!」みたいなことを言うんじゃないのか……!?)
とハラハラしていたのですが、
「僕は一番真っ直ぐで綺麗なキュウリになって、一番良いスーパーの一番良い棚に並びます!」
という誠司の宣言は、そんな自分にとっては想像の真逆で、かつ本当に素晴らしい台詞でした。
 創作物でも現実世界においても、色々な人間がいていい、教科書通りのお行儀の良い人間だけじゃなくて良い、と多様性を肯定する場面では、逆説的に今までマジョリティとされていた人たちが否定されてしまう印象がありました。
 しかし今作は、全然勉強しないでめちゃくちゃ喧嘩する人がいてもいい。将来のために一生懸命勉強する人ももちろん素晴らしい。両者が親密な仲であることになんの理由づけもいらない。ということをすべて肯定しています。

 HiGH&LOWの世界においても、戦いとは拳と拳の喧嘩だけではない。それぞれの戦いがある、ということを改めて感じました。
 全く別の作品ですが、数ヶ月前に公開された『劇場版仮面ライダージオウ Over Quartzer』のクライマックスにて主人公・ソウゴの口より語られた
「みんな瞬間瞬間を必死で生きている。人生なんて綺麗なものじゃなくていい。凹凸だらけの道でいい」
という台詞にも通じる部分があります。
 世間的にも、個性の尊重が重要視されている昨今の流れを取り入れたのかな、と少し思いましたが、ともすれば説教臭くなって抵抗を感じてしまうような主張をこのような形に落とし込んだ手腕に関心しました。

鬼邪高生として、団地の幼なじみとしての楓士雄

 
 クライマックスの鬼邪高・鳳仙共同での絶望団地殴り込み大乱闘で、個人的に一番グッと来たのは楓士雄が人間はしごを駆け上がって団地の内部に飛び込むシーンです。
 ずっと助けたくて会いたくて、探し続けていた新太にやっと会いにいける、そのためのはしごを楓士雄を信頼した面々がつくり、楓士雄がそれを駆け上がっていくという一連の流れは、今作で彼が育んできたものがギュッと詰まっているようにも見えました。

 団地突入後、オロチ兄弟とともに新太を直接説得するシーンも勿論感動しました。というのもおそらく、オロチ兄弟と風太の役者さんたちとしてはあのシーンでほぼ初めての顔合わせのはずなのに、彼らが積み重ねてきた年月が何も言わずとも伝わってきたのが印象的でした。ここに来て、やっと会えた、やっと集まれたという感動は劇中の彼らも観ているこちら側も同じ気持ちだったのではと思います。

アクションも更なる進化を遂げた!

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轟vs村山、再び!

 1対多勢、多勢対多勢など今回も様々なパターンのアクションが見られて大満足の今作ですが、1対1の殺陣で一番ボリュームを感じたのは轟と村山のタイマンです。
 インパクトある映像を撮るため、カメラマンを天井から吊るして撮影しているというパンフレット記載のエピソードはTwitterでも公開すぐに話題となっていました。自分は初見時、目まぐるしくカメラが動き回り、初めて見る映像の衝撃についていくことができず、何が起きているのか理解しきることができませんでした……。
 ギャラリーの生徒は戦闘に参加せずあくまでギャラリー。ですが、轟と村山は彼らの脚の間をくぐったり群れの中に飛び込んだり、ギャラリーをたんなる「戦いの背景」から一歩踏み込んだ使い方としてリング上に上げている表現が、今までのシリーズでは見られなかった印象的な表現でした。

緊迫感バチバチの佐智雄のワンカット長回し

 物語冒頭、怪しいバーに妹を助けに行く佐智雄のアクションシーンはワンカット長回しです。
 まだ佐智雄というキャラクターについてほとんど説明がされないまま始まったシーン。「これから何が起きるんだろう、というかこの顔のいい男は誰だ???」
で頭の中がいっぱいでしたが、一連の動きから、彼の真剣さと冷静さが同居した強さを十分に感じられました。
 個人的に、HiGH&LOWのアクションにはアトラクション的な爽快感を感じることが多いですが、今回はワンカットということもあってか画面の中の緊迫感がこちら側にまで伝わってくるような独特のシーンでした。
 今度は佐智雄の人物像と目的を理解したうえでもう一度観に行って、一つひとつの動きや視線、台詞の意味をきちんと噛みしめたい! 

まとめ

 鬼邪高スピンオフを希望する声はTHE MOVIE一作目の頃から既に上がっていた記憶があり、自分も鬼邪高はずっと大好きだけど、スピンオフは無理だろうなぁ〜と諦めている気持ちがありました。というのも「全員主役」というキャッチコピーではあるものの、あくまでHiGH&LOWはLDHのプロジェクトであり、鬼邪高定時制の主要キャストにLDHの俳優はいなかったためです。
 そう思っていた中、『THE MOVIE3 FINAL MISSION』にてシリーズが一旦終了したにも関わらずスピンオフが実現できただけでも奇跡に等しいのに、こんなにクオリティが高いものを見せてもらえたことが本当に嬉しかったし、大好きなコンテンツがここまで続いて、素晴らしいものを提供してくれていることが幸せだなぁ……と思いました。

 今回、個人的に一番印象的だったのはトッキュウジャーで毎週応援していた志尊淳にHiGH&LOWで再会し、役者としての新しい魅力を知ることができたことです。
 アクションシーンの都合もあってか特撮出演経験のある俳優の起用も多いシリーズですが、自分がリアルタイムで追っていた作品の俳優がここまで目立つ形で起用されたのは今回
初めてなので、またひとつ思入れの深い作品が増えました。
(もちろん山田裕貴演じる村山も大好きですが、そもそもゴーカイジャーの終盤からニチアサをちゃんと見るようになったので、一年間追った人に比べるとジョー・ギブケンの印象がついていなかった……)

 キャラクター、シナリオ、アクション全てが毎回こちらの想像を超えてくるHiGH&LOW。楽しくなかった思い出なんてひとつもなくて、全部が楽しくて幸せ。作品を追いかけること自体がアトラクションに乗っているような感覚があります。一生続いてくれないかな、HiGH&LOW。